タイランドは、じつに多様なカルチャーを包含していて、
日本文化にどっぷりとつかっている者には、かなりショッキングではある。

 おそらく島国に生まれ育った者には、その多様な民族と習慣や宗教への帰依という点で、ひどく格差がある。その原点は、小乗仏教と、わが国の融通無碍な大乗仏教との格差と言ってもよいと思われる。僧侶は一生家庭を持たず、酒色に溺れず、托鉢で生きる仏教中心の国なのである。

 だが、一方で労働力は女性と子供が中心で、男性はあまり働かないようである。一夫多妻の家族制度も少数民族を中心に存在しており、男女の関係にはかなりの柔軟性があるようだし、公的に認知された売春制度は今も残っている。

 古式タイマッサージには、ストレッチ体操とヨガや太極拳などが一つに合体されたような効き目と激しさがあるが、一つ歯車が狂うと男女の間のかなりセクシャルな形をとる。それをマッサージ師はむしろ期待し喜んでいるようなふしがある。それは、チップを弾んでもらうためのサービスかも知れないのだが。

  ガイドさんの話だが、この国には、山岳民族や近隣の国から移住して来た多くの民族がいて、それぞれが習俗や宗教を守っているのである。

 注目に値するのは一夫多妻の民族と性の開放的な傾向である。粗末な一部屋だけのあばら家に数人の妻をはべらす民族もいるが、女性同士のいがみあいはないそうで、まことに祝着、羨ましい限りである。もっとも、売春は公的に認められているので、女性を百人近く抱えるソープランドやカラオケクラブなどが、昼間から公然と営業をしている。ガラス張りのひな壇に女性たちがずらりと並んで、思い思いのポーズをとってお客の気をひく。また、マッサージ師も若手はチップをねだって春を売るのが普通だそうである。技術の不足を体でカバーしチップにありつく。これも貧しい国の貧しい者たちの生き抜く知恵ではあろう。

 セブンイレブンで買い物をしていた日本の男性に言い寄った女性をホテルに連れ込んだところ、セーフテーボックスに「指輪をしまって下さい」と頼まれた。そして、盗み見て暗証番号を覚えられてしまった。その後、下心のあった男性はビールに睡眠薬を入れられて前後不覚に眠り落ちている間に現金・カード・パスポートなどを盗まれた。ぶざまで哀れな話しである。
 この事件などもこういう風土だからこそ起こりうるのであろう。

 ところで、ガイドさんの話では、こういう事件は、結構多いのだそうだ。それは、カラオケクラブの女性をホテルに連れて行き、ぐっすりと眠り込んだときなどに貴重品を盗まれてしまう。周辺の国から出稼ぎにやって来た女性が増えているからだという。
 日常の生活に仏教を中心としたモラルがしっかりと根付き、朝に晩に祈りをささげ、男性は1度は僧侶の修行をするのが不文律の国だが、生活のためには何でもするのが動物、特に人間の哀しいサガである。

 この国は、1・2月が乾季で過ごしやすい。チエンマイは高地なので特に住みよいそうでロングステイの日本人はかなりいるそうだ。安いホテルは1ヶ月2万円ぐらい、日本から食べ物を持ち込み、時々は日本料理店に行く。物価が安いし、かなり日本料理店があるので不自由はしない。月10万円もあればおつりが来るそうだ。「やまと」という店などは、すし・刺身・麺類から味噌汁まで何でも食べ放題で千円ぽっきり出し、ほかの店も似たようなものである。

 ここで出会ったガイドの娘さんは、大学で習ったたどたどしい日本語を話す。素直でいつも笑顔を絶やさない。派手なお化粧もしなければ服装も地味である。
テロとサウズでお客が少ないので1500バウツのサラリーではアパート代が2,000バウツなので不足する。姉さんの夜店を手伝って500バウツ稼いでいるが、食費はお母さんに貰っているという。(1バウツは3円)

 田舎はチエンマイから1時間ほどのところで、大地主のようである。「果物はいくらでもあるし、山にはチークの大木もたくさん生えている」という。「それでは、今度来たときには訪ねたい」というと、「ぜひ来て下さい」とニコニコしている。