千葉県は、四方を海と川に囲まれた半島です。
昔は、農林業と漁業が中心でしたが、現在では、新しく開発された住宅団地と工業地帯に人口が集中して、元々の村々の人口はかなりへり、小家族になってしまいました。

 昔話は、私たちの祖先が、集落の寄り合いや家庭で口から耳へと語り継いで来たものですからこの千葉県でも語り手はほとんどいなくなりました。この本は、語り手の代わりとしても役立つでしょう。  

 また、昔話は、長い間にわたって、その土地に根づいて語られて来ましたから語り口や言葉が微妙に異なります。話の筋はあまり変わらなくても語り口は変わりますから味わいも変わるのです。ですから、この本は、消えかかっているその土地の言葉を生かして書かれています。 

 千葉県は、古くは「上総」(房総半島の南部)、「下総」(房総半島の北部)に分けられていましたが、さらに上総の南を「安房」としました。上総は、中央に小高い山々が連なり、東西には海があります。東側は荒波の打ち寄せる砂浜と岩の海岸で、西は遠浅でおだやかな東京湾岸です。
 安房は、半島の南端ですから黒潮の打ち寄せる荒海です。
 下総は、利根川・江戸川と太平洋・東京湾に囲まれた平野です。成田空港やデズニーランド・幕張メッセなどの日本を代表する施設と住宅地ですが、元は馬を放牧する所でした。また、海岸では漁業も盛んでした。明治のはじめと昭和20年代に開拓されてみごとな農業地帯となりました。

 昔話には、それぞれの土地(風土)の歴史や人々の暮らしぶりと願いが込められていますから房総半島の海や川、そして山村と平野を舞台としたものがとても沢山あります。
 それは、この本を手にとっていただけば、すぐにお分かりになるでしょう。房総の香り豊かな海の風・山奥の木々のささやき・見渡す限りの台地の緑をこの本をとおして味わって下さい。(日本標準社)